物忘れを中心とした認知症は心療内科や精神科でも診察を行います。長谷川式知能スケールといった簡易なスクリーニング検査や問診から認知症が疑われる場合は、MRIやSPECT(脳の血流を調べる検査)が可能な病院に検査を依頼します。
主な認知症の種類
- アルツハイマー型認知症(50%)
- レビー小体型認知症(20%)
- 脳血管性認知症(15%)
認知症症状を起こす病気
- 正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 甲状腺機能低下症 など
これらの病気は物忘れなど認知症と同様の症状を引き起こすことがありますが、治療すれば症状が改善するため見逃さないことが大切です。正常圧水頭症や慢性硬膜下血種などは頭部MRIなどの検査で区別できるため、画像検査をしておくことは大切です。甲状腺機能低下症などは血液検査で異常がないかを調べられますので、血液検査をすることも重要です。
物忘れの訴えも多いうつ病
うつ病の方で物忘れを自覚される方はよくおられます。若い方でも自分は認知症になったのではないかと仰る方も多いですが、特に年配の方で物忘れを感じるうつ病の方は、特に自分が認知症ではないかと心配されます。うつ病の憂うつな気分や興味や関心が低下するといった症状以外に、思考力・集中力などが著しく低下することがあり、その結果自覚症状としては物忘れが強く感じられることがあります。
物忘れがある時、それがうつ病の症状によるものでないかを診断することは非常に重要です。また、認知症の方にうつ病が合併することもよくありますので、両方の症状が現れていないかに注意を払う必要もあります。
アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多く見られます。脳細胞が病的に徐々に死滅して減っていくことにより、特に新しいことが覚えられないタイプの物忘れが徐々に進行していきます。アルツハイマー型認知症は進行を遅くするタイプの薬が数種類ありますので、画像検査などでアルツハイマー型認知症と診断された場合は抗認知症薬を内服し進行を遅らせます。アルツハイマー型認知症では物忘れ以外に、怒りっぽさ、幻覚、抑うつ症状などが出現することがあり、その様な症状が出現する場合は心療内科・精神科で治療をすることが多くなります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症によく見られる症状
1.認知機能の変動
時間や場所、周囲の状況に対する認識や会話をした際の理解力などが、悪い時と良い時の差が目立ちます。
2.幻視
人の幻視が出現することがあります。夜間に多くなる傾向があります。
3.パーキンソン症状
筋肉が硬くなるため、体の動きが減る、運動がぎこちなくなる、手が震える、姿勢が前傾になる、バランスを崩しやすくなる、小股で歩く、突進して止まれなくなるなどの運動症状が出現します。立ちくらみや失神、便秘などが起こることもあります。
4.レム睡眠行動障害
襲われる、追いかけられるなどの悪夢が多く、睡眠中に立ち上がる、暴れる、大声を出すなどの症状が出現することもあります。
レビー小体型認知症の治療
レビー小体型認知症そのものの進行を遅くする薬はありません。幻視などの症状を緩和するために、少量の抗認知症薬や抗精神病薬が使用されます。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血の結果、脳細胞が障害され起こる認知症です。はっきりとした麻痺を来すような大きな脳梗塞が起こらなくても、微小な梗塞が積み重なることで認知症症状が起こります。
動脈硬化が進むと脳梗塞が起こりやすくなるため、動脈硬化の原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)、喫煙歴などがある方は脳血管性認知症のリスクが高くなります。
頭部CT、頭部MRI、脳血流SPECT等の検査で診断を行います。
一度発症した脳血管性認知症の治療法はありませんので、脳梗塞による脳血管性認知症の場合は新たな梗塞を起こさないようにするため、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの治療をしっかりと行います。