自律神経失調症

病院で「自律神経失調症」と言われたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし自律神経失調症というのは均一な一つの病気ではなく症候群です。

突然動悸がする(ドキドキする)、汗をかく、体が熱くなったり寒くなったりする、息苦しくなるなどの症候の集まり(群れ)なのですね。その様な症候(自律神経症状)を起こす原因は色々あり、例えばうつ病、パニック障害などの不安障害、更年期障害、甲状腺機能の異常、過度のストレス状態などによって自律神経症状が引き起こされます。

逆に言えば、「自律神経失調症」と言われた時、うつ病、パニック障害、更年期障害、甲状腺機能の異常、低血糖、過度のストレス状態などの可能性があるということです。自律神経症状が強く出た場合、「自律神経失調症」と診断されることもありますが、背景に何か自律神経症状を引き起こす病気が隠れている場合もあります。

次に自律神経についてですが、自律神経は交感神経と副交感神経に分かれます。交感神経は緊張している時に優位に働く神経で、副交感神経は安静にしている時に働く神経です。自律神経によって例えば心臓の速さ、発汗、体温などが調整されています。自律神経とは体が自律的に調整を行う神経という意味ですが、心臓の速さ、汗、体温などは自分の意志では調整できませんよね。そう、体が自律的に調整を行っているから自律神経なのです。発汗を例にすれば、緊張すると交感神経が優位になり汗をかきますが、リラックスして副交感神経が優位になっていれば汗はかきませんね。

自律神経は交感神経と副交感神経が対になって体の様々な部位に分布し、自律的に体を調整しています。

  •       交感神経      副交感神経
  • 瞳孔    拡大        縮小
  • 涙腺    分泌が減る     分泌が増える
  • 汗腺    分泌が増える    ―
  • 気管    広がる       狭まる
  • 心臓    速くなる      遅くなる
  • 血管    収縮する      緩む
  • 血圧    上昇する      血圧が下がる
  • 消化液   分泌が減る     分泌が増える
  • 膀胱    ゆるむ       縮む
  • 立毛筋   縮む        ゆるむ

うつ病では気分の症状以外に、不眠または過眠、食欲低下または過食などの症状が診断基準にありますが、睡眠や食欲は自分の意志では調整することが出来ず自律神経が司っており、これらも自律神経症状です。また、診断基準にないものの、動悸、発汗、体温調整の異常などの自律神経症状がうつ病の際によく見られることも知られています。

パニック障害や不安障害は、もちろん過剰で病的な不安感も重要な症状ですが、動悸、発汗、息苦しさ、窒息感、嘔気、寒気または熱感などが診断基準の項目にあり、これらは当に自律神経症状であるわけです。パニック障害は自律神経症状の塊と言っても過言ではないでしょう。

不安障害の一種である社交不安障害は、人に注目を浴びる可能性のある場面での著しい不安や恐怖が重要な症状ですが、診断基準にはありませんが、その様な場面で顔が赤くなる(血管が拡張)、動悸がする、体が震えるなどの症状を認めます。

更年期障害で有名な症状はホットフラッシュや顔のみに見られる発汗ですが、これは更年期に差し掛かると女性ホルモンの分布が急激に増えたり減ったりすることが自律神経に影響を及ぼすことにより起こると考えられています。自律神経は血管にも分布しているため、血管が急激に拡張したり収縮することによりホットフラッシュ症状が出現します。

片頭痛は脳の血管が拡張し、三叉神経が刺激されることにより起こると考えられています。先にもありますが、血管の拡張や収縮は自律神経により調整されているため、うつ病や更年期障害で自律神経のバランスが崩れると片頭痛が起こりやすくなります。女性では、うつ病を引き金に片頭痛が起こることが多いことも知られていますし、うつ病の方は片頭痛のリスクが高いことも知られています。

強いストレスを受け続けるとストレスホルモンであるコルチゾールが副腎から分泌され、それが自律神経に影響を与え様々な自律神経症状が出現すると考えられています。

心療内科や精神科では自律神経症状を診た場合、うつ病などの気分障害、パニック障害などの不安障害、更年期障害、強い心理的ストレスの影響などによる自律神経症状の可能性を考えて診断を行った上で治療方法を検討します。もちろん中には原因がはっきりせず、「自律神経症状が出ていますね」としか言えないようなケースもありますが、自律神経症状を診た場合、それを引き起こしている疾患の診断を行うことが重要です。

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