「更年期障害」は実は日本特有の概念です。欧米諸国では「周閉経期症候群」に伴う身体症状に加え、この年齢層の心理社会的背景に伴う精神心理的症状を併せたものを指します。
更年期障害で現れる症状
日本人の平均閉経年齢は50歳頃と言われています。12か月間の無月経をもって閉経と診断しますが、一般的に閉経の4~5年前から卵巣機能の低下が起こり、月経不順となります。卵巣ホルモンの一つであるエストロゲン量の急激な変化によって自律神経症状が起こることを「周閉経期症候群」と言います。
最もよくみられる身体症状は、頭頚部のみの多汗、心悸亢進などの血管運動性症状(ホットフラッシュ)です。不眠や肩こり、易疲労性、めまいもよく見られます。手指や膝の関節痛、こわばりが現れることもあります。
精神症状としては、不眠、うつ病、抑うつ気分がよく見られます。日本人女性では欧米の女性と比べて精神症状が出易いことが知られています。
50歳前後で月経パターンの変化がある、もしくは閉経後5年以内の女性が、上記のような症状を呈する場合に周閉経期症候群と診断します。
更年期障害に明確な診断基準はない
月経歴を含む問診により診断する症候群です。更年期障害によくみられるホットフラッシュなどは、うつ病や不安障害だけで出現することがある身体症状です。年齢や月経歴から周閉経期でなければ、ホットフラッシュがあっても更年期障害とは診断されません。
血液検査では、卵巣刺激ホルモンとエストラジオールの値が周閉経期かどうかの診断補助に使われることがありますが、閉経前の周閉経期では卵巣刺激ホルモンとエストラジオールの変動は非常に激しいため、これらのホルモンの値のみで更年期障害を否定することはできません。
更年期障害の治療
不眠や抑うつ症状などの精神症状はホルモン補充療法単独で軽快することは少なく、向精神薬や漢方薬を使用します。
ホットフラッシュには抗うつ薬の一種であるSSRIが奏功します。