うつ病に関する勉強会に参加しました。
これまでも言われてきたことですが、抗うつ薬の種類によって効果に差があるかというテーマにおいて、複数の研究の結果から言えることは、やはりどの抗うつ薬も効果に大差はないということでした。現在、よく使用される抗うつ薬としては、SSRI、SNRI、NaSSAなどの比較的新しいタイプの抗うつ薬があります。
SSRI:レクサプロ、ジェイゾロフト、パロキセチン、デプロメール=ルボックス
SNRI:イフェクサー、サインバルタ、トレドミン
NaSSA:リフレックス=レメロン
上記の通り、SSRIは4種類、SNRIは3種類、NaSSAは1種類あります(薬の名前は全て先発品の商品名)。うつを改善する効果はどれもほぼ同等と言われます。ただし、大勢を対象とした調査では効果に差はないのですが、一人の患者さんに対しては、ある抗うつ薬が、別の抗うつ薬より効果的であるということはしばしばあります。
すると実際に抗うつ薬をどの様に選ぶかという話になりますが、それは副作用、他の薬との相互作用、用量調整の幅、抗うつ効果以外の作用などを総合的に考えて処方することになります。
例えば、SNRIは排尿困難の副作用が起こりやすく、前立腺が肥大している可能性が高い高齢男性には向いていないのでSNRI以外を使用します。
他の薬との相互作用が多く、他の薬の濃度を上げる可能性が高い抗うつ薬は、複数の薬を内服している方には向きません。その様な場合は、相互作用の少ないレクサプロやイフェクサーが内服し易いということになります。
用量調整の幅は、レクサプロというSSRIは開始用量が10㎎であり、有効用量も10㎎からであるため飲み始めから有効用量に達することができるとの利点があります。他の薬は少量から開始し、2~3週間かけて増量する必要があり、有効用量に達するまで時間がかかってしまいます。ですが、少量で効果が出た場合、少量のまま維持できる利点もあります。
抗うつ効果以外の作用としては、リフレックス=レメロンは食欲を出したり眠くなる効果があるため、食欲が低下し不眠のある方に向いています。サインバルタは疼痛に対する効果があるため、体の痛みを伴う方に処方されることがあります。SSRIはパニック障害や社交不安障害などの不安障害にも効果があるため、不安症状を伴う方にしばしば使われます。
現在のところ、どの抗うつ薬がある患者さんに最も効果的かを予め予測する方法はないため、上記の様なことを総合的に勘案しお薬を調整していくことになります。
また、内服を早期に中止してしまう主な原因としては、副作用が挙げられます。例えば、SSRI、SNRIは飲み始めの吐き気や気持ち悪さが、NaSSAは飲み始めの眠気が頻度の高い副作用として知られています。いずれも飲み始めの3~10日程度で、それらの副作用は軽減していくことが多いので、副作用が出現したとしても、内服治療を諦めてしまわないことが大切です。副作用が非常に強い場合、他の抗うつ薬に変更すると内服できるケースも多いので、主治医とよく相談しましょう。